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郊外型医院の計画論
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郊外型医院の計画論

MD建築設計事務所 福山與助
影国社「医院建築 」No14 に掲載 1994年
1.最近の医院開業事情

厚生省は現在の国家財政逼迫の、高齢社会化の趨勢のもと、医療費の国家負担額の削減をめざしている。その流れの中で、自己負担率の増加、ベッド数の削減と自宅療養化、病院・診療所および中間施設(老人保険施設)の機能の明確化などをテコに、入院医療費の削減をはかっている。そのためいわゆる病診連繋の名のもと各施設の機能の専門化を目的に、保険点数による誘導を行っている。 また、医師不足時代の医学部の新設・定員増の結果、現在では医師過剰の時代を迎えつつあり、大学病院・大病院などでのポスト不足と、将来の開業適地の不足をみこして、開業を急ぐ傾向もみられる。 いずれにせよ行政の締めつけと競合により、開業医も初めて本格的な競争の時代に入ったといえよう。ただ他の業種から見ればまだまだ恵まれた競争といえるのだが。

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2.医院の郊外立地の理由

近年の医院の開業は標榜科目にかかわらず、郊外に立地するものが大多数といってよいであろう。その理由としてはいろいろ考えられるが、次のようなものが原因であろう。 まず、第1に市街の中心部や成熟した街区での新規開業が立地および採算の面で大変むつかしい状況である。 その理由として、

  1. 競合する既存医院の存在
  2. 未利用地が少ないことによる建設適地(位置・面積など)の不足
  3. 土地価格が高いなどの経済的理由
  4. 未利用地が少ないことによる転入人口増が期待できにくいとか、住民の高齢化による人口減(子息などの転出・独立)などの患者的要因。

第2にモータリゼーションによって必ずしも医院の近くに多くの住宅があることが絶対条件ではなくなり、それよりも交通量の多い地域幹線クラスの道路に接するとか、わかりやすい場所にあるとかの条件の方がより重要な要素になったことがあげられる。

第3に施設内容的な面から医院の大型化の傾向があげられる。 そのための土地・建物が得られやすい郊外が候補地となる訳である。 医院の大型化の要因としては下記のようなものがあげられよう。

  1. 患者のアメニティのため、ゆったりとした待合室、入口の二重ドア化(風除室)、トイレの男女別化と大型化、外部の車寄せのキャノピー等々の要求。
  2. 医療機器の充実および診療方法の多様化によるもの(内視鏡、超音波、CT等々新たな医療機器の導入・普及と、理学療法・リハビリの充実、点滴処方の増大など)と運営事務上の要因によるもの(医療コンサルティング、カルテおよびフィルムなどの収納、自動検索などをみこした受付バックヤードの充実など)。
  3. 従業員のアメニティのため、専用トイレ、休憩室・更衣室の充実などによるもの。
  4. 患者用、従業員用の駐車スペースの確保。

第4に経済的な理由と将来への可能性があげられる。郊外の農地などは買うにしても借りるにしてもリーズナブルであり、まとまった土地を手に入れやすいことと、近隣に空地が多いということで将来の変化への対応(駐車場の拡張など)がしやすいこと。
この2つが最も重要な要因といってもよいのかも知れない。

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3.郊外型医院の立地条件

郊外型医院に要求される立地条件は、極論すれば地域密着の小型スーパーマーケットやドライブインレストランと同じと考えてよいだろう。 地域住民が日常生活のために(買物、通勤、通学など)頻繁に利用する生活道路で、大型トラックなどの通過交通が少なく、地区と地区を結んでいるような地域幹線道路に面するか、近接していてわかりやすく、目立ち場所が望ましい。ただし交通量が多すぎ渋滞しやすかったり、スピードの出しやすいところであったりするのはマイナスである。また信号の数、道路の幅、付近のロケーションなども重要な意味をもつ。 具体的には、古くからの道路は沿道への住宅の密集はあるが幅員が狭かったり、見通しが悪かったりとマイナス要素も多いので、最も理想的な立地としては新しく道路整備されたり、バイパスが通ってたりしてその沿道に店舗などの新築が進んでいる地区(新開地的なところ)や、宅地造成・区間整理などで開けた新興住宅地などがあげられる。そしてできればあまり建てつまってなく、ある程度空地のある場所が望ましい。ただいずれにしても周辺人口と競合施設(半径3km程度の範囲で考える)の条件が最も重要なファクターであることは論を待たない。

4.敷地の条件をどう読むか

前項で立地(敷地の位置)についての条件をあげたが、ここでは立地以外の敷地のチェックポイントを列挙しておこう。細かく条件を整理していくと、現在では理想的な敷地はごく少ないというのが現実である。

  1. 前面道路の状況
    道路の位置と接し方(片側・2方・3方など)、接道する長さ、信号の数と位置、幅員、分離帯・歩道の有無、反対車線からの進入方法、道路勾配・カーブの有無、見通しの程度乗入幅、車の通行量・走行速度・車種、歩行者や自転車の通行量等々を確認し検討する。例えば車の出入りについて、外カーブは見通しがきくのでよいが、内カーブはマイナス(危険)であるとか、道路勾配の影響とかを考慮して乗入位置や幅を検討する。
  2. 近隣の状況・雰囲気
    近隣の建築物について、種類業種(特に両隣)、配置・規模・階数・形状・質感・色彩、駐車場の大小・位置・雰囲気、建物のグレードや品格、夜間の明るさなどをチェックし、計画施設との対比、バランスを考える。
  3. 敷地の形状と道路の方位
    道路の方位と敷地の形状は、前項の隣接の状況と相まって建物配置(日照・通風などの確保と駐車場の位置)を左右するので非常に大切である。
  4. 敷地のGL、隣接・道路のGL
    施設の見え方と入りやすさに影響する。

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5.住宅と医院の関係

最近では郊外で開院する医師がその地区の出身であるケースはまれで、多くは地域の公立病院とか大病院での数年の勤務の後、その経験を生かす形で開業する場合が多い。また近年では開業適地のリサーチと土地情報のみにより、緑もゆかりもない場所で開業する。いわゆる落下傘開業もかなり多くなっている。いずれのケースもよそからの転入開院である以上、医院に近接して住まう必要がでてくる。その地域に住み、地域住民として地域に根差した活動が要求されるからである。
そこに住まうことによってはじめて地域社会の一員として認知され、安心感・信頼感をもって迎えられるのである。田舎ではこの傾向がより顕著に現われる。もちろん医院における職住近接の理由としては他にも職業柄、転勤が多い医師にとって住宅取得の大きな機会であることも現実であり、経済的理由と相まって、同時一体の建物となることが多いのであろう。そのため下階に医院、上階に住居という形になる場合がほとんどである。この場合、当然、住居も含めて医院の建物という認識になる。地域住民としてだけの住居ならともかく、医院住宅としてはあまりプライベートな部分が見えすぎるのは好ましくない。
一方、日本の気候・風土においてはやはり南面を開放的に扱い、日照・通風を充分確保することは快適に住まう上で重要である。また、洗濯物への日照、ふとん干しなども強いニーズがある。医院建築としての品格、雰囲気を保持しつつ、住居の開放性とプライバシーの確保が必要とされるが、同時に閉鎖的な取りすました形でなく、地域に対して開いた感じとあたたかさが要求される。そのため敷地の形状、道路の方位、隣接建物(特に南側)の状況をよくよんで、全体計画、配置計画がなされなければならない。
また開業される医師は通常35歳~45歳ぐらいまでの方がほとんどで、まだ子供の幼いケースも多い。接地しない階を住宅をつくる場合、接地する住宅以上に気軽に利用できる外部空間(一定以上の広さのバルコニーなど)を用意したい。この外部空間は幼い子供の遊び場として、多忙な医師の息抜きの場として大いに役立つと思われる。また土や植栽(小屋上庭園)をもちこむことにより、より心安らぐ場となりうる。さらにこれらはプライバシーに寄与し、落ち着きと親しみやすさも演出してくれるであろう。
また医院住宅を考える場合、特に配慮すべきことは、住居部分へのアプローチと自家用車の扱いである。どちらもあまり目立たない形でさりげなく処理されることが望ましい。玄関については、その位置によって門を含めた施錠管理の方法を検討しておかなければならない。また車の存否が外部からあきらかな扱いになっていると、防犯上など望ましくないことも多いので考慮されるべきである。

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6.郊外型医院の設計上のポイント

ア.全体計画

具体的に設計を進めるに当たってまず大切なことは、敷地に対してどの位置にどのように大きさのどんな形の建物をつくるかということである。配置計画の良し悪しは、建物の見え方や駐車場の取り方を決定し、大変重要な意味を持つ。また住宅部分のたたずまいにも大きな影響がある。特にどのように見えるかという点は、近隣の建物との対比も考慮した上で、後述する見せるかという点と合わせて慎重に計算しなければならない。 ではどのように見せるかであるが当事務所では、

  1. 施設を大きく見せるような方法を考える、
  2. いくつかの特徴的デザインヴォキャブラリーを用いて建物自体がアイキャッチの役目を果たし目立つものとする、
  3. 陰影のある表情豊かな建物にする、

等々を心がけている。


大きく見せる方法としては、建物を特徴づけることと内外の平面計画の自由度を増すという目的もあるのだが、構造柱を外に出して柱・梁のフレームを見せ、その部分のヴォリュームで実面積よりも大きく見せる方法を何度か試みている。この方法は建物に奥行きを感じさせ、陰影をつくり、さらに心理的スクリーンとして患者や家族の安心感をもたらす効果があるのではと思っている。
また診療部分と住居部分の面積があまり差のない施設の場合には、住居部分を2層(2、3階)にすることにより屋上バルコニーを確保するとともに大きく見せている。
さらに屋上バルコニーに屋根や庇、パーゴラなどをかけ、雨防ぎとしながら個性を主張しつつ大きさを感じさせる方法を多用している。
目立たせ方の手法としては、いろいろなデザインエレメントを用い、ある程度にぎやかな形とする場合が多い。ただ外装材料としては質感のしっかりしたものを用いている。打放しコンクリートやハツリ仕上、土の味わいの残るせっ器質タイル、レンガ、石、ステンレス、アルミ、ホーロー、しっくい、木等々いずれも存在感のある材料を用いることとしている。
また色彩もこのような材料を用いることにより必然的におさえ気味な上がりになる。またテクスチャーは一般的には2~4種程度の仕上材料を用い対比的に扱うケースが多い。色やテクスチャーはあまりにぎやかにすると鼻につくことも多いのでおさえ気味とし、形は多少にぎやかでもプロポーションのバランスさえ良ければ飽きのくることはないと考えている。さらに近隣の建物に対しても形やテクスチャーなど、あえて対比的なデザインをするケースが多い。

陰影のある建物を心がけているのは、近年のっぺりした建物が多くなっているように思われ、そういう素顔をすべて晒した箱のような建て方は、当事務所のとる方法でないからである。この陰影がほどほどにプライバシーを守り、親しみやすさをつくりだし、結果として地域医療の拠点としての医院らしさに繋がるのではと考えている。

また、夜間の見え方を演出するために外構照明と建物のライトアップには意を用いている。光を当てることにより昼間とは違った目立ち方と雰囲気が得られ、光源を考慮することによって暖かな感じを与えることができる。


イ.駐車場

駐車場の計画は、医院の機能の本質的な部分ではないのだが今では計画で最も重要な事項といっても良いのかもしれない。限られた敷地の中でいかに多くの駐車台数を確保するか、それによって建物の平面ボリュームや位置などが決められてしまうケースも多い。車のスケールと敷地のスケールのせめぎあいで残った寸法で建物をまとめざるを得ないわけである。

また駐車の仕方、車路の寸法、1台当たりの駐車スペースのサイズなども重要である。診療科目によっては老人や女性などあまり上手でないドライバーが多い場合もあり、車の大型化傾向と相まってできるだけゆったりとしたサイズになるように心がけている。幅2.7×長さ5.2メートルぐらいとれると安心である。幅については車路幅が広い(6.5メートル以上)場合には2.5メートルぐらいでも仕方ないだろう。ただ逆に車路幅の狭い場合には幅を広く取る必要がある。長さについては車止めを設けた場合のテールとノーズの寸法差を考慮しておかないと車路の幅に影響がでて使いにくい駐車場となる。また小児科とか整形外科とか、子供を抱いての乗り降り、不自由な手足をかばっての乗り降りなどの考えられる診療科では当然配慮が必要である。
駐車場の計画においてもうひとつ大切なことは歩車の分離を考慮することである。敷地寸法などの物理的理由であきらめざるを得ないケースもあるが、歩道から建物へのアプローチには歩行者専用通路を設けておきたいものである。
駐車場の仕様については、アスファルト簡易舗装程度が一般的で、当事務所でも予算的制約でそうなるケースが多い。近年の開業事情に資金的余裕がないのでやむを得ないのだが、何とか工夫したいものである。雨水の地中浸透、緑化などの目的のための透水性舗装、プラスチックと芝生を使った緑化舗装などが考えられる。当事務所ではコンクリートを一定の大きさに分割して打設し、その目地部分(30ミリ程度の幅のグリッド)に芝生を貼って緑化と雨水の浸透(コンクリート下の砕石を浸透層として)をはかった例がある。コスト的にも比較的リーズナブルであったが、現在ではその程度の予算もなかなかさけない状況である。だが雨水の流出量の増大対策など身近なエコロジーの問題は個々の施設で少しずつでも対処していかなければならない問題であろう。


ウ.植栽

植栽はどんな用途の建物でも大変重要であるが、医院・住宅にとっては特に大切にしたいものである。田畑をつぶして造られるケースの多い医院建築にとっては、失われた自然を多少なりとも補填する意味もあり、また新緑や紅葉、花、果実等々により四季折々の変化が心をなごませやすらぎと親しみやすさを感じさせる。それだけでなく、待合室や診察室をおおうブラインドの役割を果たし、プライバシーの保護と眺望が得られる。木を植えることにより待合室や診察室を開放的に扱うことに役立たせ、樹木が精神的かつ物理的緩衝帯(スクリーン)となり、眺望のきくブラインドとして機能してくれる。この効果は医院のアメニティにとって大きな意味がある。積極的緑化は近隣環境に対しても好影響を及ぼすものであろう。特に敷地周辺部、駐車場部分への植栽も積極的に行いたいものである。施設の一体感をつくりだす効果が大きい。


エ.プライバシー

医院にとってプライバシーの問題は重要である。当然道路を通る人や駐車場から待合室や診察室が見通せるということは論外であるが、それを守るために閉鎖的になったり、暗い感じの医院になっては本末転倒といえよう。開放的で明るい環境をつくりながら、安心感を与えられる手法をとる必要がある。物理的に完全な目かくしを考えるのではなく、前にも述べたが、樹木、塀、目かくしスクリーン、構造物(柱・梁など)、オブジェ、等々を用いることにより、ある程度物理的に用い、残りを心理的な安心感を得られるような方法で補い、トータルとして開放的でありながら安心感のある落ち着いたスペースをつくる。

当事務所では柱、梁を建物から離して設け、柱の内外の部分に植栽をほどこし、これにより得られる距離と、緑のブラインドによる物理的スクリーン、そして柱・梁による心理的スクリーン(人間には透けていてもある存在を境界と感じる心理がある)により開放的な部屋をつくるといった手法を用いることが多い。

また高木を植えることにより2階部分の目かくしにも役立ち、屋上庭園(小さな植込み)をうまく配置すると、上下の緑がつながり奥行きを感じさせることとなり、住宅部分の見え方をスマートにコントロールすることができる。他には手すり部分にガラス(熱線反射ガラス)とか、パンチングメタルとかを使用することにより目線の透けとプライバシーの折合いをつける場合もある。さらにゲートとかモール、といった構造物をつくることにより物理・心理両面のスクリーン機能を期待することもある。

オ.外部のサイン計画

医院にとってサイン・看板は特に充分な考慮・検討を要する事柄である。患者に存在を知らしめるためにという意味ではもちろんであるが、逆にただ単に目立つためだけの大きな文字やきちんとデザインされていないものなどは、その施設の主の感性を疑わせるものとしてかえってマイナスにも作用し得る。医院建築では特に、近隣環境、建物の形や大きさ、配置などとのバランスを考慮したさりげなさが大切だと思う。
当事務所では建物自体を看板・サインと考え,前述したような手法で設計している。本来建物が最も大きなものであるわけだから、これが目をひくものになれば、あとは施設名がわかる程度の名称看板とその他のインフォメーションに支障ない程度のものがあればよいわけである。ただ時には開業前の医師の不安心理から大きな施設名看板を希望されるケースがあるが、当方の考え方を説明するし、あまり大きすぎないもので納得していただいている。今までお手伝いした医院はほとんどこの形で成功されているようだ。
サイン方式としては施設名の場合、内照式のものとネオンを使用したものを用いるケースが多い。診療案内などについては内照式やステンレス板腐食文字彫込みものを用いていたが、開業されてから運営の中で、休診日診療時間の変更、在宅看護の増加による在宅診療日(往診)の新設などによって変更の必要がおきることもまれではなく、最近では変更の可能性の高い部分は簡単に対応できるように配慮している。
またサインの意味でゲートまたは門柱を設けることも多い。ゲートを設けることにより駐車場まで含めた施設に一体感を出すと同時に、道路からの進入位置をインフォメーションするのである。前面道路の状況によっては大変有効である。


カ.アプローチ

建物へ患者がアプローチする際に必要なものとして歩行者用道路、スローブ、キャノピーなどが考えられる。
駐車場計画、道路位置などにもよりむつかしい場合もあろうが極力歩車分離されたアプローチを計画したい。
また歩行者通路とは完全な歩車分離を考えると多少矛盾する場合もあるが、玄関先に車の乗降時に雨の防げる程度の車寄せキャノピーがあると便利である。整形外科や小児科など、家族が送り迎えすることの比較的多いケースでは大変喜ばれている。車寄せが無理な場合でも庇は大きくしておきたいものである。 また駐車場などと診療所の床は一定レベルの差ができるわけであるが、当事務所では通常の考え方とは逆行するようであるがプライバシーの観点からある程度の(600~900)段差をつけるようにしている。ただしお年寄りや体の不自由な方のために階段の他に必ずゆっくりしたスロープつけるようにしている。スロープをつけるようにしている。スロープは中途半端な勾配ではかえって危険であるので一定以下の勾配にする(1/15以下程度)とか、床材の吟味(ノンスリップ)、手すり(位置、高さが重要)などに気をつけている。特に床材はノンスリップ性能のみに気をとられているとその小さな凹凸につまづく患者さんもみえるということを知っておく必要がある(足の悪い方の中には足があがらずひきずってしか歩けない方もあり、2,3ミリの段差でつまずくことがある)。


キ.アメニティのための配慮

本稿では建物内部の個々のアメニティの追求についてはふれず別稿にゆずるが、総論としては明るさ、広さ、清潔さ、開放性、眺望、適切な空気環境、絵画・植物などによる演出や装飾などによって患者が診察待ちの時間を思い思いにリラックスして過ごせることができればよい訳である。医療従事者にとっても同様であろう。そういった快適性とは別に是非考慮しておきたいこととして、診療時間前の来院患者が待合室の中でゆっくりと待てるような平面計画の必要性があげられる。管理の問題との兼ねあいもあるが、当事務所では待合部分だけ独立した管理区域とすることのできるプランニング(中待との間に診療時間中は開放しておくドアを設け、受付部分の開口をガラス建具またはブラインドシャッターで締切るできるようにする)としている。2ヶ所ロックするだけで時間外でも自由に待てる待合室となり、受付も開放的なものとすることができる。もちろん空調は個別運転とし、TVなども自由に見られる。こうすることにより、医師・従業員も診察開始時間ぎりぎりまで有効に過ごせるので大変喜ばれている。 ク.その他の設備工事、工作物
その他、郊外型医院に限らないが、外部廻りで考慮しておく必要のある物を列挙しておく。

  • 自転車置き場
    位置としては道路際か、診療所入口近くに設ける。数台分は上屋のついたものとしたい。当事務所ではできるだけヴォリュームをおさえるように心がけている。1/4円柱をねかせた形のものをパイプとテントで構成し、植栽で取りかこみ目立たず直射日光をさえぎる。注意しなければならない点は床の仕上で、駐車場の続きで簡易アスファルトが負けてスタンドがめり込み転倒するケースがある。コンクリートとした方が無難である。
  • 浄化槽
    郊外立地の場合、都市下水の整備されていないケースが多く、浄化槽を設置することとなる。医院の大型化に伴い合併処理となることも多い。住宅付けの場合、診療部分の面積が65坪~70坪以上になると合併とせざる得ないのでコストを把握・計上しておく必要がある。また放流先についても事前調査をしておく必要がある。合併処理の場合、駐車場に設置することが多く、耐圧設計も忘れてはならない。
  • キュービクル、受水槽
    やはり施設が大型化してくると必要になるが、コストとの兼合いで外部設置することが多い。設置位置もコスト、騒音、安全、保守などいろいろ検討要素はあるが当事務所では極力、目立たせないことを優先し目隠し塀をデザインしたり植栽などで取り囲むことが多い。
    受水槽は3階以上に水廻り(トイレなど)があると必要となるが、医院・住宅程度の場合、小型の加圧タイプを用い、高架水槽を置くことはしない。
    キュービクルも一般的には必要になる場合も多いが、可能な限り低圧受電の方法をさぐる。低圧の方がイニシャルコスト・ランニングコストとも有利であり、診療部分と住宅部分を別受電することにより、それぞれ50kW以下におさえるという方法もある。
  • ゴミ置場、医療廃棄物置場、焼却炉
    ゴミは生・可燃・不燃の各ゴミが診療部分と住宅部分の双方からできるので結構なヴォリュームとなる。最近では自販機を置く場合もあり、目立たずゴミ出しに便利なところへ十分なスペースを考えておく必要がある。
    医療廃棄物は注射針など危険なものが多いのできちんと管理された鍵のかかるスペースとする必要がある。また点滴などの 残滓が腐敗し臭気を発生することがあるので考慮しておく必要がある。
    郊外型医院の場合、近隣環境に比較的ゆとりがあり、ゴミを燃やしても近所迷惑にならないケースもあるので、焼却炉を希望されることも多いが、設置に当っては風向き、隣家の状況など充分配慮する必要がある。
  • 物干し・ふとん干し
    日本の気候・風土においてはふとんや洗濯物を天日に干したいという要望は必然であろう。医院建築の場合あからさまな生活感を見せるのは望ましくなく、また雨天時時対策、風対策(上階は予想外に風が強い)として屋根付、ある程度囲われたスペースとしたい。当事務所では最近サンルーム的な物干しスペースをつくることも多い。
7.おわりに

以上、郊外型無床診療所を念頭に稿を進めてきたが、有床診療所の場合も基本的な点は同一である。ただ全体の規模が多少大きくなることと、病室部分へのアプローチが外来アプローチの他に必要になり、また住宅部分がさらに上階に設けられることになる。プライバシーについてはあまり考慮する必要がなくなるが、逆に各部へのアプローチが複雑になり、時間帯の異なる各エリアの管理方法に意を用いる必要がある。

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